ゆるおに ~当代一の俊英、はじめてのTRPG~
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~当代一の俊英、はじめてのTRPG~

TRPGを、初心者(ややチート)が 遊びます。



前半



刹那「おい」
宣水「お召しか?」
刹那「日本語がバグッているぞ。ヒマならTRPGやらんか? キーパーとしてシナリオ叩いておきたい」
宣水「?」

刹那「あ、知らんか。テーブルトークロールプレイングゲームというのだが。ええと、まったく知らん者にどう言ったもんか。ゲームの登場人物となり、俺の用意したシナリオを会話形式で楽しんでもらう、という遊びなのだが」
宣水「ここで指すゲームとは、コンピュータゲームのことか?」
刹那「そうか、ゲームというのは広義だな。お前はコンピュータゲームをあまり知らんのだろうし、小説と呼んだ方が伝わるかも知れん。お前は小説の主人公となって、その世界で行動する」
宣水「主人公なあ」

刹那「トークゲームを一切知らんか?」
宣水「『ディプロマシー』なんかは遊んだことがあるが。此紀がえぐいタイミングで裏切ってくる」
刹那「ああ、んん、惜しい。ウォー・シミュレーションゲームの中でも、プレイヤーの対話が肝となる『ディプロマシー』を挙げたということは、かなりわかっているとは思うのだが」

宣水「小説の主人公になれ、というのはわかったぞ」
刹那「まあお前ならやってりゃわかるか。では、どういう主人公であるのか、最初に決めてほしい」
宣水「うん? 人物設計を、俺が何もかもか?」
刹那「名前、年齢、性別、簡単なPR。あとは技能値……ゲーム中に適用するステータスを割り振ってほしい。技能はまたあとで説明するので、プロフィール部分だけ先に頼む」

宣水「宣水、250歳、男、健康さが取り柄だ」
刹那「ちょっとサバ読むな。あと、お前自身だと、俺がやりにくい。創造してくれ」

宣水「ジャンヌ、16歳、金髪の美しい少女だ」
刹那「いきなりガチのTRPG勢のキャラシみたいなオタク好きするやつ作ってきたな。名はジャンヌでもいいが、国籍は日本な」

刹那「というか、お前にはジャンヌの台詞を考えて喋ってもらうことになるが、16歳の少女でいいのか」
宣水「女言葉で喋れということか? 女は女言葉で喋るというのは、偏見であり差別だろ」
刹那「……まあそうだな。それはその通りだが、この遊びではできるだけ、俺を言い負かすのやめてくれ」

刹那「お前はルールの飲み込みも早いだろうし空気も読むだろうが、見かけのわりに真面目だから、あんまり面白いこと言わんだろうな」

刹那「(ライン通話)『ディプロマシー』でえぐいタイミングに裏切る女~」
此紀「久しぶりにやる? ロシアがいいわ」
刹那「お前いつもロシア取るよな。俺はハンガリーで開幕から使い倒されて捨てられる。いや、今回はクトゥルフどうだ。初心者のチュートリアル」
此紀「うーん、まあいいけど」

~部屋に登場~

此紀「え? 初心者ってあんた? あんた絶対こういうのやらないと思ってたけど」
宣水「俺に不向きか?」
此紀「あんたの趣味には合わないと思ってたわ。クトゥルフTRPGって、理詰めで行くと肩透かしを食うような」
刹那「お前は理詰めで解いてくるだろ。前提を知ってりゃ、新しい理が構築される。ミステリだと思って遊ぶと、そりゃ違うだろうが。モンスターパニックホラーだ」

宣水「推測するに、ラヴクラフトのクトゥルフ神話を冠してるということは、『絶対的で理不尽な恐怖』に立ち向かうなり、立ち向かえないが、その恐怖と寄り添っていることを承知するなりで遊ぶもんなんだろ」
刹那「今日も絶好調だな。お前は文系だから、そのへんは織り込んで行けるか。おっしゃる通りで、クトゥルフの神話生物の手のひらの上で遊ぶのが基本だ」
此紀「シナリオによっては手のひらを破壊するけど、初心者だとまず無理よね」

刹那「プレイヤーが優秀だと、KPがポンコツでもフォローされてしまうので、お前たち2人だとテスターとしてはイマイチだな。うーん……」

KP刹那「初めてのシナリオを回してみるか。短くてまとまった話がいいな。『毒入りスープ』にしよう。ちょっと改変するから、キャラシ作っててくれ。俺のことは『KP(キーパー)』と呼ぶように」

宣水「さっきも言ってたが、キャラシとは?」
此紀「キャラクターシート。あんたが動かすキャラクターを設定するのよ」

KP刹那「名はジャンヌ、16歳、金髪の女だそうだ。ステ振りの説明をしてやってくれ」

此紀「随分かわいいの作るわね。えー、ステータスはSTR(筋力)とか、8種類をダイスで決定するんだけど、パッと見ればわかるでしょうから、ここ参照しておいて」
宣水「3D6というのは何のことだ?」
此紀「3個の6面ダイスを振って決める、ということ。つまり最大値は18」

宣水「というと、SIZ(体格)とINT(知力)の『2D6+6』というのは、6面ダイスを2個振って出た数に、6を足すということか。ダイスの目が10なら、16だな」
此紀「そうね。刹那は横着KPだから、3D6を『20面ダイスで振って-2』にすることがあるけど」
KP刹那「今回はちゃんと6面ダイス使うが。余談だが、20面ダイスの場合、1・2・20がファンブルだ」

宣水「Fumble?」
此紀「球技の『取り落とし』のほうから来てると思うわ。ええとまず、ゲーム中に行動の可否を決めるためにダイスを振るわけだけど、たとえば『周囲を見渡す』という行動を起こしたい場合、KPが『1D100の目標値50で見渡し成功』と設定したとするでしょ」
宣水「ああ、そうやって可否を決めるのか。というと、『周囲を見渡す』というだけの行いが、50%も失敗するのか?」
KP刹那「正確には、周囲を見渡すこと自体は(首を物理的に固定でもされていなければ)100%成功だが、『50%の確率で、もっと目が利いて、詳しい情報を得られる』ということだ」

宣水「了解した。話を戻して、ファンブルというのは?」
此紀「5%の『致命的失敗』。96から100の目を出すと、たとえば『周囲を見渡す』の場合、視界の半分までしか見えないとか、そんな感じ」
宣水「高い目を出したのに、致命的失敗となるのか?」
此紀「メジャーなルールだと、下方判定なのよ。目標値50なら、1から50の目を出すと成功。51以上は失敗」
宣水「数が小さい方がいいわけだな。すると反対に、1から5を出すと優遇されたりするのか?」
此紀「その通り。1から5は『クリティカル』で、より良い行動を取れるわね」

宣水「目標値というのは、原則50%か?」
KP刹那「そこは全然違うな。目標値は、お前たちの決めるステータスや技能で変動する。あと俺の判断」

此紀「技能はあとで説明するけど、まあ『医学』っていう技能があるのよ。私の医学値が40で、あんたが5とするじゃない? 目の前に病人がいて、その症状に見当をつけたいとき、私とあんたで成功値が同率というのも変な話でしょ」

KP刹那「『医学』は初期値が5だな。技能の値は、そのままパーセンテージを示す。医学5と40の者がいる場合、患者を診る時の標準成功率は5%と40%」
宣水「ということは上限は100だろ。医者が40ってのは低いんじゃないのか」
此紀「別に『医学』に100まで振ってもいいんだけどね。技能ポイントは『INT×10』だから、INTで18を出せれば180ポイント持ってることになるわ。『医学』に上限まで振っても85余る」

宣水「技能ってのは、特技みたいなもんなんだろうな。選んで割り振ると。で、INTは『2D6+6』だから、最低値は1+1+6で8。この10倍だと80だから、ダイスの目がもっとも悪いと、医者でも『医学』が80%でしか成功しないってことか」

KP刹那「ちゃうねんな」

此紀「医者は『医学』『応急手当』『信用』『心理学』『精神分析』『ほかの言語』『1つの自由な技能』に、別途『EDU×20』のポイントを振れるわ。EDUは『3D6+3』だから、最低値が6。職業技能ポイントは、最低でも60」
KP刹那「技能に使えるポイントは、基本の『個人技能(最低80)』と、『職業技能(最低60)』を足して、ダイス運が最悪でも、140は持っていることになる」

宣水「ああ、『職業』というステータス項目があるわけだな。それによって伸ばしていい特技が別途生まれると。医者以外には何がある?」
KP刹那「自由に決めていい。俺がそれに合わせて、割り振れる技能項目を決める」

此紀「年齢『35歳』、性別『男』、職業『ニート』、PR『大学を中退して以来引きこもり』、口癖は『ババアうるせえんだよ』」
KP刹那「職業技能『隠れる』『コンピュータ』『忍び歩き』『聞き耳』『オカルト』」
此紀「このように、刹那KPはプレイヤーの考えた職業に合わせてくれるけど、普通はマニュアルの『職業一覧』から選ぶわね」

宣水「技能項目というのは、かなり多そうだな」

KP刹那「多いので、一覧ドゾー。ポイントを割り振らない場合の初期値も記載されている」

宣水「初期値がもっとも低いものは0、もっとも高いものは50か」
KP刹那「『こぶし(初期値50)』は、まあパンチは誰でもできるから、当たるかどうかが半々ということだ。もっとも低い『クトゥルフ神話(初期値0)』には、ポイントを割り振ることができない。これはゲーム中、たま~~~に自動習得する。その特性を持つのはこれだけで、他のすべての技能には自由に振れる」

宣水「汎用性の高そうな技能は初期値が高く、専門性の高い技能は初期値が低いわけだな。わかりやすい」
此紀「両腕がなくなると『こぶし』成功率も0%になるわよね?」
KP刹那「なるが。両腕がないと、こぶしを繰り出そうかどうかとかいう以前に、もう死んでるだろ」
宣水「そうとも限らんだろ?」

此紀・刹那・宣水「わっはっは」

此紀「まあ要するに、『1.ステータス8項目をダイスで決める』→『2.そのINTとEDUによって技能ポイントを算出し、自由に技能を割り振る』で、キャラクターシートは8割できるわけ」
宣水「あとの2割は?」
此紀「先に作っておいた、名前、性別、年齢、容姿、PR。どっちを先に作ってもいいけど。『STR(筋力)18+SIZ(体格)18』とかが出たら、筋肉ゴリラだから、美少女設定は無理あるかしらね」
KP刹那「身長2メートル体重100キロの美少女でも、俺は止めないが」

此紀「技能ポイントの上限は100?」
KP刹那「95だ。どのみち96から100を出すとファンブルにするので、100まで振っても意味がない」

宣水「95の技能をいくつか作っておくのと、汎用性の高そうな技能を平均的に上げるのと、どっちが一般的なんだ?」
KP刹那「プレイヤーによる。だが、95まで振り切るのは珍しい。俺ならせいぜい70くらいにして、25は他に振る」
此紀「だからあんたは器用貧乏になるのよね。推奨技能は?」

KP刹那「推奨技能は……『目星』『図書館』『医学』『薬学』『化学』かな。医学以下はほぼ同じ扱いなので、どれかに振ればいい」

宣水「ん?」
此紀「これだけ技能が多ければ、使う機会のない技能もあるのよ。逆に、よく使う技能もある。シナリオによって変わるから、KPは『今回のシナリオではこの技能を取ると有利になる』というのを、大体教えてくれるわ」

宣水「まずダイスを振って、8ステータスを決めるわけだな」
此紀「私も振るわ」


宣水
STR(筋力):9
CON(頑健さ):7
POW(精神力):12
DEX(敏捷性):6
APP(魅力):15
SIZ(体格):10
INT(知力):10
EDU(教養):11

此紀
STR:5
CON:17
POW:7
DEX:13
APP:9
SIZ:9
INT:10
EDU:17


KP刹那「宣水はメンタルの強い美少女できたな。此紀は風邪をひかないモヤシができている」
此紀「頑丈で足が早くて教養もあるけど、腕力と精神力が低い……」
KP刹那「お前では? INTはもっと高いだろうが」

宣水「アイデアだとか、ステータスから自動算出の数値もこっちで出しておいた方がいいか?」
KP刹那「こちらで出しておくが、手元に控えておきたいなら自由にしてくれ」
此紀「大体わかってればいいでしょう。……私はSAN値も宣水の半分くらいになるわね」

KP刹那「SANというのはSanityであり、クトゥルフには欠かせないパラメータだ。『正気度』を意味し、クトゥルフ的な恐ろしい目に遭うと、これが減る。0になった時点で、発狂となり、そのプレイヤーはゲームオーバーになる」
此紀「POWが7、つまりSAN値35と平均よりも低い私は、発狂しやすいわね。SAN60の宣水は、やや有利だわ」

宣水「……」

宣水「このシートを作り終えた時点で、それ以降のゲームはダイスで自動的に進むのか?」

KP刹那「それ面白いか? シナリオに全比重がかかるだろ」

KP刹那「というわけで、答えはNOだ。進め方については、最初のうちは此紀を参考にするといいだろう。まずは技能を振って、シートの作成を終えてくれ」

宣水「そうしよう。……個人技能の前に、職業技能を決めた方がやりやすいか。KP、俺は職業を『シスター』にしよう」
KP刹那「美少女シスターか。本格的にオタク受けするやつ作るなお前は。ええと、『聖職者』は元々マニュアルにある職業だ。職業技能は『聞き耳』『経理』『心理学』『説得』『図書館』『ほかの言語』『歴史』『1つの自由な技能』」

宣水「俺の職業技能ポイントは、『EDU11×20』で、220だな。
『図書館』に70、『心理学』に90、『芸術』に60振ろう」


KP刹那「特化振りだな。『図書館』と『心理学』を95にしてきたか。芸術はなぜだ?」
宣水「なんとなくだ」

此紀「年齢とEDUは関係ないのよね?」
KP刹那「今回はない。好きな年齢に設定していい」

宣水「あとは個人技能か。それらしいところに振ろう」

KP刹那「できたシートは公開。全員に共有される」

此紀「名前は早良、女、29歳、医者。集中して振った技能は『キック』『目星』『信用』『精神分析』『医学』」

KP刹那「OK。ゲームの進め方は、説明するよりやってみた方が早いだろう。開始する」


『毒入りスープ』


KP刹那「ある日の夜。医者の早良と、シスターのジャンヌは、それぞれ自宅の寝室で眠りにつこうとしていた」

KP刹那「さて、RPを入れてもいいし、場面をスキップしてもいい」

ジャンヌ「ロールプレイというのは、ここで俺が16歳のシスターとして喋るということだな」

KP刹那「そうだ。これから寝るシスターとして、何か行動があれば表明してくれ。特に何もなければそれでもいい」

ジャンヌ「わからんので、何もない」

早良「29歳美人医師の早良は、美貌を維持するためにパックをしてから寝るわ。あ、最近は物騒だから、護身用のナイフを身に着けておかなくちゃね」

KP刹那「このようにRP部で、のちのち自分の有利になる行動を取っておくのだ。美貌はともかく、護身用のナイフを携行できるのは大きい」

ジャンヌ「ロールプレイ部は何でもありか?」

KP刹那「空気を読んで、俺を説得できる範囲ならば。爆弾100個とか言われたら、俺の裁量で、その場で爆発させてゲームオーバーにする。バランスブレイク斬りだ。場面が自宅なので、護身用の刃物の一本くらいは構わない」

KP刹那「両プレイヤーが就寝したので、次のシーンに移る」

KP刹那「自室で寝ていたはずの早良とジャンヌは、見知らぬ部屋で目を覚ました。四方に扉のある、正方形の小部屋だな。壁と床はコンクリート製で、部屋の中央には木製の机と椅子がひとつずつ置かれている」

KP刹那「部屋の中は薄暗く、天井の豆電球が唯一の光源だ。机の上には木製のスープ皿がある。椅子の上には二枚の紙切れ」

KP刹那「そしてお前たち二人は、白いローブのようなぼろきれを着ている。身に覚えのない衣類だ。そして他には何も持っていない

早良「護身用のナイフは?

KP刹那「お前たちは何も持っていない

早良「無駄RPを打たされたわ」
ジャンヌ「目が覚めて見知らぬ部屋にいて、粗末な服を着せられていたと。それで?」

KP刹那「ここからはお前たちに行動してもらう。プレイヤーが能動的に行かんと、TRPGは形にならない」

ジャンヌ「行動とは?」
早良「この状況、まずは私とあんたの挨拶じゃない? 同じ服を着ているんだし、普通に判断して、立場は一緒でしょ」

ジャンヌ「では、挨拶する」

KP刹那「あー、ト書きタイプのRPか。できればセリフ付きでやってほしい」

ジャンヌ「? ジャンヌという。シスターだ」
早良「情報だけを文語調で……。金髪の少女なのよね? 外国人の方?」
ジャンヌ「国籍は日本だが、初対面で開口一番、国籍を聞いてくるのは失礼じゃねえのか。ディープな個人情報だし、髪の色で国籍を推量するのは差別に繋がる」

KP刹那「確かにその通りなのだが、めんどくせえな」

早良「私の意図としては、状況がわからないから、この場所が日本ではない可能性もあると。だからあなたの国籍も聞いておきたいと、そういうことよ」
ジャンヌ「了解した。こちらも日本人だ。同じように、状況は知らされていない」

早良「なるほど、流暢な日本語だわ、と納得するわ。口に出すと怒られそうだから、心の中で」

KP刹那「簡単な挨拶が終了したようだが、このシナリオは時間経過があるので、行動を起こした方がいいのではないかな」

早良「部屋の中をもう一度描写してほしいわ」

KP刹那「コンクリート張りの正方形の小部屋で、薄暗い。光源は天井の豆電球。四方の壁には扉がある。部屋の中央に、木製のテーブルと椅子。テーブルの上には木の器、椅子の上には2枚の紙切れ」

早良「扉よりも先に、部屋の中のオブジェクトを調べるべきでしょうね。テーブルの上の木の器を手に取るわ」

KP刹那「器の中には赤い液体がなみなみと入っている。温かく、湯気が立っており、無臭だ。持ち重りがする」

早良「赤というのは紅茶系? 透明度はどのくらい?」

KP刹那「もっと詳しいことは『目星』でわかるだろう」

早良「では目星95、つまり成功率95%の私がダイスを振るわ。はい31、成功」

KP刹那「透明度はなく、赤黒く見える。お前は医者だし、医学にも95まで振っているので、もうダイス振る前に教えてやるが、血液のように見えるな。そう思った瞬間、無臭だったスープが鉄さびの臭いを発した」

早良「トマトシチューだと思ってみることにするわ」

KP刹那「?」

早良「連想したものの匂いを発するんじゃないの?」

KP刹那「ア゛ー違う。その発想はなかった。臭いは鉄さび」

早良「ジャンヌもそう感じてるの?」

KP刹那「ジャンヌはまだ挨拶以外に行動していないので、スープの匂いが届く範囲にいない。器の中の赤い液体も見えていない」

ジャンヌ「うん? 同じ行動を踏襲するのは、ただの二度手間じゃねえのか?」

KP刹那「お前は器を見てもいいし、見なくてもいい。ただ見ない場合、情報を入手しないということになる。お前はまだ、スープが赤いことも、温かいことも、匂いも知らない」

早良「私がそのへんのディテールを伝えるけど」

KP刹那「では、そこで初めて、ジャンヌもスープの情報を入手する」

ジャンヌ「……」

ジャンヌ「やっぱり二度手間じゃねえか?

早良「うーん。他プレイヤーとは別行動だからこそ、片方だけが危険を回避できたりもするんだけど」

KP刹那「初心者には、『既知/未知』を『プレイヤー/キャラクター』で使い分けるのは複雑かも知れんな」

KP刹那「では、原則としてツーカーでいい。アナウンスは共通だ。早良へのメッセージはジャンヌにも伝わる。逆も然りだ」

早良「じゃあ二人三脚でやって行きましょう。スープはとりあえず置いておいて、椅子の上の紙? それを見るわ」

KP刹那「2枚ある。1枚目には、短い文章が書かれている。日本語だな。内容は以下だ」


 帰りたいなら 一時間以内に 毒入りスープを飲め。
 飲むまでは 君じゃあここから 出られない。
 一時間以内に 飲めなかったら お迎えが来るぞ。



早良「ふんふん。スープとはこれ? ではないんでしょうね、すぐ終わっちゃうし」
ジャンヌ「なんで毒入りとわかってて飲まないといけないんだ」
早良「お迎えが来るからでしょ。クトゥルフだし、そうでなくても拉致監禁されてるんだから、『お迎え』が良いことなはずはないわね」
ジャンヌ「ああ、毒入りといっても、致死量じゃないという話か」

KP刹那「……」

KP刹那「しかし、ああこれプレイヤーとしての雑談だから時間経過ないが、お前、弥風くらいうるさいな」

ジャンヌ「ノン、別にケチをつけてるわけじゃない。遊び方がわかってないんだろう。そのうちわかってくると思う」
早良「あんたテレビゲームもやらないものね。プレイヤーと勇者の関係だから、別に難しいことはないんだけど」

KP刹那「当代一の俊英も、そういうところはおじいちゃんだな」

早良「まあ、勇者に戻って、2枚目の紙を見るわよ」

KP刹那「こちらは簡易的な地図に見える。こんなんだ」

nc110056.png


早良「ここが『スープの部屋』なんでしょうね。四方の扉が、これらの部屋に繋がってると」

ジャンヌ「聞きたいんだが、現在、俺たちの目的は何なんだ?」
早良「一時間以内に、毒入りスープを飲むことじゃない? 早くしないとお迎えが来るって書いてあったし」

ジャンヌ「そのすべての要素に納得が行ってないんだが。なぜ紙のメッセージを信じ、さらに従う必要がある? そういうものなのか?」

早良「そういうものね。クトゥルフの不文律というか。別にメッセージを信じなくてもいいし、従わなくてもいいんだけど、信じて従うことを前提にシナリオが作られてると思うわよ。これがクトゥルフではなくて、ミステリやスリラーだとしても、私たちが行動を起こさなければ、一時間後にほぼバッドエンディングでしょ」
ジャンヌ「ああ、了解した。じゃあ従っていくか」

KP刹那「紙切れの言うことは信じなくてもいい。というか、隣の部屋には、『何も口にするな』とか書いてある紙切れがあるかも知れないだろう」

早良「ああ、そうね」
ジャンヌ「なるほど。手がかりを集めていくわけか」

KP刹那「そうそう。TRPGの基本は探索だ。一時間といっても、リアルタイムの一時間ではなく、ゲーム内の行動で判定するから、急がなくてもいい」

ジャンヌ「『飲むまではここから出られない』と紙に書いてあったが、さっきの刹那の説明だと、『飲んだかどうかを問わず、隣の部屋には行ける』と解釈できるな。ここでは飲んでいいが、隣の部屋では飲むな、という意味のメッセージかも知れないが。または時系列や段階式かも知れない」

KP刹那「ノーコメント」

早良「『ここ』が、部屋単位ではないんだと思ってたけど。この建物を指してるんじゃないの?」
ジャンヌ「かも知れんな。遡るが、さらにそのくだり、紙には『君じゃあ出られない』と表記されていた。単数形だ。俺たちではなく、俺かお前のどちらか一人、あるいは第三者に宛てられていると思われるが」

KP刹那「推理小説くらい詰められても期待に沿えないので、文章を改変する。『君たち』でもいい」

ジャンヌ「そうか。俺の考えは的外れだったらしい」
早良「たまたま外れてただけで、着眼の仕方は間違ってるわけじゃないわよ。2枚の紙は、一応持って行きましょうか」

KP刹那「1枚目に『目星』で、もっと詳しいことがわかりそうな気がする」

早良「成功率95%の私がもう一回振るわ。はい16、成功」

KP刹那「紙の裏にも文章が書かれていることに気付いた。内容は以下だ」


あたたかい 人間の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ


KP刹那「医師である早良が、事前に血液を連想しているため、この文章は真実であるように思われた。おぞましい想像に、ここでSANチェック。失敗すると正気度が減るぞ」

早良「うーん」
ジャンヌ「おぞましいと言われてもな」

KP刹那「ハイ文章を改変」


あたたかい 豪礼の 血の スープ 冷めない 内に 召し上がれ


KP刹那「お前たちに豪礼という名の共通の知人がいる、というわけではなく、まあ知り合いの血だよと、そういうメッセージだ。はいSANチェック。まずは現在のSAN値を目標にして1D100でダイスを振る」

早良「現在35。ダイス66、失敗」
ジャンヌ「60だ。ダイスは14。成功か」

KP刹那「ではジャンヌはオッサンの血液などへっちゃら。早良はショックを受ける。1D6の正気度減少」

早良「はいSANダイス。……うっ、6。運悪く最大値6のダメージを受けて、早くも正気度が29に」
ジャンヌ「あと4回繰り返しても大丈夫な計算だが、まずいのか?」
早良「SANダイスの最大値は都度変わるから、1D10みたいなダイス振らされると、出目が悪いと3回で発狂ね」

KP刹那「お前の元SAN値が低いので、今回は『不定の狂気』は無しでいい。本来は20%のSANを失うと、狂気判定があるのだが」

早良「一度に5以上のSANダメージ受けると発症する『一時的狂気』は?」

KP刹那「お前はいいとして、ジャンヌは狂気RPできるんか」

早良「やらんでしょうから無しでいいわね。さて、東西南北の部屋をしらみつぶしにしないといけない予感」
ジャンヌ「そういうものか」
早良「推奨技能に『図書館』あったから、書物庫から行きましょうか。ああ、東西南北がわからないのかしら」

KP刹那「そこはわかるということでいい。書物庫は西だな。四方の扉は材質が違うように見えるが、西の扉は木製だ。『聞き耳』で、中の様子がうかがえるだろう」

早良「ジャンヌ、聞き耳いくつ?」
ジャンヌ「初期値の25だな」
早良「じゃあ50の私が『聞き耳』で、扉の向こうの様子をうかがう。ダイス40、成功」

KP刹那「特に何も聴こえないな」

ジャンヌ「ん? 成功したのにか?」
早良「扉に聞き耳をせよ、っていうメッセージでしょ。他の扉に何かあるのよ、たぶん。木の扉を開けます」

KP刹那「施錠などはされておらず、スッと開いた」


(後半へ続く)


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