ゆるおに 鬼たちの「パラノイア」その2
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鬼たちの「パラノイア」その2
TRPG「パラノイア」を鬼たちが遊ぶ
~『ビギナー市民 蘭香のための やさしいパラノイア』その2~



UV刹那―1「さて、シートはできたか? 項目はこのあたりを参照してくれ、基本的なステータスの割り振りルールなどは、一般的なTRPGとそこまで変わらん。能力やスキルの特徴はここここをザッと参照するとわかりやすかろう。ただし、俺のハウスルールとは異なる部分も多いので、その点は留意しておけ」

UV刹那―1「なお、俺のハウスルールにおいては、いわゆる『下方判定』であり、クリティカル(もっとも良い目)は1、ファンブル(もっとも悪い目)は20だ。たとえば行動の目標値が『3』であった場合、成功させるには、ダイスで『1か2か3』を出す必要がある」


R蘭香―1「TRPG自体は少しだけ存じておりますけれど、このゲームは本当に初めてなので、どう振るのが良いのか…。ええと、このMT能力は……。ここの結社ボーナスは…」

UV刹那―1「細かいことは俺にそっと聞いて確認してくれ。各自ググッてもいいが、ハウスルールによってかなりのバラつきがある、と繰り返しておくぞ。シートは最終的に俺がミスがないかどうかチェックをする。ちなみにハウスルールとして、シートは他プレイヤーには全非公開、成功値とダイスの出目も非公開だ」

R蘭香―1「えっ!? 全部ですか!? 出目も!?」

UV刹那―1「完璧なるこのUVがインチキをするわけもない。出目非公開はむしろ、お前たちのステータスや所属が他のプレイヤーにバレないようにという温情だ」

R万羽―1「さすがUV様はお優しいわー(他のプレイヤーのステ振りが見えないと作戦や所属を割り出せないのにぃ…)」

UV刹那―1「なお、どうしてもというのなら、成功値と出目は公開というルールにしても良い。ただしすべての成功値にマイナス2補正がつく

R此紀―1「ああ、2くらいなら見えた方が……」
R東雲―1「いや! 出目非公開でお願いします! 常時2マイナスはね! デカいんでね!」
R万羽―1「あんた、なんか推測されると困るステータスがあるのね?」

R蘭香―1「……わかりませんけれど、GM……UV様の有情に期待して、それっぽいところに振りましたわ。提出します」

R此紀―1「私も」
R東雲―1「俺もこんなとこで」
R万羽―1「あたしもー。オーバーしてないでしょ?」

UV刹那―1「……ふんふん。……ほお。……なるほど。全員問題なしだ。受理した.」

R東雲―1「(どうせ初心者はなんとなく見目がイカつそうなところに振って無駄打ちになるもんだ。その点、俺は完璧な市民だからな。『あつかましさ』のスキルは『靴を舐める』に全振りだぜ!)」
R此紀―1「(東雲はどうせ、『賄賂』だの『靴舐め』だのに振ってるでしょうから、それは利用させてもらうとして、私は他に振ったわ)」
R蘭香―1「(MT能力の『悪食』? 変わったものがありますのね。こういう能力は玄人好みであるのが定石。私は汎用性の高そうな『魅了』を取りましょう)」
R万羽―1「(此紀はともかく、東雲は初心者にも容赦がなさそうだから、ちょっと蘭香をサポートしてあげよっと)」

UV刹那―1「では、開幕する」

☆☆☆

UV刹那―1「職場の同僚である市民此紀、市民万羽、市民東雲、市民蘭香は、仕事の帰り道で談笑していた」

R此紀―1「今日も幸福な職務を終えたわ。充実しているわ。ちなみにUV様、道の色は?」

UV刹那―1「そこから確認かよ。お前ら4人が歩いてる以上は赤だよ。大丈夫だよ」

R蘭香―1「道の色?」
R東雲―1「上位クリアランスカラーに塗られてる道を歩いたら、それだけでZAP対象だ」
R蘭香―1「あ、人工都市だから、全面カラーリングが行われているのですわね? 下位……黒しかありませんけれど、黒い道を歩いたりするのはどうなのですか?」
R万羽―1「それは問題ないわよ」

UV刹那―1「はい、街頭に設置されているスピーカーからミッションアラートが鳴るぞ。『トラブルシューターである市民此紀、市民万羽、市民東雲、市民蘭香は、30分以内にブリーフィングルームまで来るように。遅刻は反逆である。以上だ』

R蘭香―1「ふうん。思っていたよりも普通の導入ですのね」
R此紀―1「……」
R万羽―1「……」
R東雲―1「……」

R蘭香―1「? 私たちがブリーフィングルームに呼ばれたのですよね? 参りましょうよ」

R此紀―1「参りましょうって、ブリーフィングルームについての情報がゼロじゃない」
R蘭香―1「えっ」
R万羽―1「情報端末にアクセスするわ。ブリーフィングルームについての情報を調べる」

UV刹那―1「残念。お前らレッドのクリアランスには開示されていない情報だ」

R蘭香―1「えっ。あ、情報端末とは、こう、近未来のスマホのようなものですか?」
R東雲―1「……市民蘭香? 『すまほ』とは一体なんのことかな?」
R蘭香―1「アッ」

UV刹那―1「まあ初心者温情で見逃してやれ。ハウスルールの一環とも言えるしな。そうだ。スマホのような情報端末を市民は全員が持っている」

R東雲―1「(チッ)……UV様、初心者温情ありということは、プレイスタイルはZAPではなくストレートあたりですか?」

UV刹那―1「まあそうだな。だが初心者にとっては、ストレートでも充分きついだろう」

R蘭香―1「プレイスタイルとは、難易度のようなものですか?」

UV刹那―1「まあ、そんなようなものだな。『ZAPスタイル』はその名の通り、ガンガン言葉狩りをして、クローンを減らしていく。『ストレートスタイル』はそれよりも少しゆるい、ストーリー重視の進め方だな」

R此紀―1「初心者がZAPスタイルで入ったら、5分で全機無くなるわよ。ストレートでちょうどいいでしょ」

R万羽―1「ねえ、それよりブリーフィングルームに行かないと、いくらストレートでも先が無いわよ」
R東雲―1「ZAPスタイルだと誰もブリーフィングルームに辿り着けないとかも普通だからな」
R蘭香―1「スタート地点にさえ!?

R東雲―1「……完璧な市民である此紀様は、ブリーフィングルームの場所を当然ご存じですよね? 辿り着けない者は反逆者ですからねえ」
R此紀―1「あら? 私に突っかかるのね? そりゃ完璧な市民である私は共産主義って本当にすばらしいと思うわ。こんな支配制度は間違ってるわ。人間は階級などに縛られず平等であるべきよ。鬼は違うけどゲーム内の私たちは人間だから平等平等平等よ

R蘭香―1「えっ

UV刹那―1「来たな此紀のお家芸。開幕即プロパぶっぱ

R此紀―1「さあ、これで全員共産主義の同志になったわ」

R東雲―1「ふん、今打っていいんすか同志此紀様? 同志万羽様、たぶんスキル『施設知識』に少しポイント振ってますよね? こっから30分圏内で、ブリーフィングが行われる可能性のある場所を考えてみてください。情報は『平等に』共有しましょう

R万羽―1「むー。同志に頼られちゃ断れないわね。UV様、『施設知識』でダイス振ってー」

UV刹那―1「……成功だ。徒歩20分くらいの場所に、ひとつだけ該当しそうなビルがある。端末で調べれば位置も出てくるだろう」

R此紀―1「ZAPスタイルなら徒歩30分圏内にブリーフィングルームがあるわけないんだけど、ストレートならそこでしょ」

R蘭香―1「えっ」

UV刹那―1「まあぶっちゃけそうだが、あまりメタ推理をするなよ」

R東雲―1「歩いて20分ねえ。だが俺はあえて『公共』のインフラを頼る! コミーだからな! UV様、このあたりに公共の乗り物的なものはありませんか!?」
R此紀―1「あんたいつもその手よね」

UV刹那―1「お察しの通り、慈悲深いコンピュータ様が全市民に解放している『瞬間移動マシン』が道の隅に設置されている。瞬速で射出されるポッド型装置で、目的地を入力すると2秒で到着。100人のインフラレッドをテストモニターとして乗せてみたが、事故などは1件も報告されなかった優れ物だ」

R東雲―1「そりゃあ完璧なコンピュータ様が設計された装置ですからね、事故なんか報告されるわけありませんよね。なので俺はそれに乗ります。目的地を『そのビルの玄関前』に設定して射出オン」
R蘭香―1「……?」

UV刹那―1「市民東雲はポッドに乗り込んだ。……ポッドはすぐに射出され、上空10メートルほどで爆散した

R蘭香―1「えっ!?

UV刹那―1「ポッドの破片と、粉々になったR東雲―1の死体は、市内を巡回している清掃ボットによって、すぐに片付けられた。……いわゆる『デスルーラ』だ。R東雲―1はこれで死亡。2体目のクローンはハウスルールにもよるが、俺の卓では、ポッドに入力した目的地へと送られる」

R万羽―1「残機1と引き換えに、タイムロスなしで目的地に着ける方法よ。あと、ポッドは高確率で爆散するけど、ダイスでクリティカルが出れば、運よく生きたまま目的地に着けることもあるわ」

R東雲―2「(端末越しに)いやあ前回の俺はコンピュータ様が用意してくださったポッドの操縦をミスして爆死するような間抜けだったが、今度の俺はとっくに目的のビルに到着したし完璧だぜ! コミーの洗脳も解けたしな!

UV刹那―1「解説すると、完璧なるコンピュータ様の設計なされたポッドが事故を起こすわけがないので、爆散したのは反逆者であった自分(の前クローン)の操縦ミスのせい、というコンピュータ様への媚態だ」

R蘭香―1「! なるほど! この行動はかなり最適解に近いのでは!? 残機を1失うとはいえ、メリットがとても大きいです! 目的地にすぐ到着し、コミーの洗脳も解ける!」

R万羽―1「人は平等だからアドバイスしてあげるけどぉ、同志蘭香。残機1を甘く見る者は残機1に泣くのよ? せっかく徒歩圏内に目的地があるんだから、歩いて行けばいいじゃない?」
R此紀―1「その通りね。無駄打ちよ。これだからにわかのコミーは駄目なのよ」
R東雲―2「(端末越しに)ははん。無事に時間内に着いてから言っていただきたいっすね」

R此紀―1「同志万羽、ビルまではちゃんとレッドが歩いていける道が通ってるんでしょうね?」
R万羽―1「UV様、もっかい『施設知識』でダイス振ってー」

UV刹那―1「それは『施設知識』の範疇を越えているので、不可能だ」

R万羽―1「いいもん。地図くらいは端末に出るもん。はい、地図を端末で出しました」

UV刹那―1「地図によると、普通にレッドが歩いて行ける道が通っているようだな」

R此紀―1「いくら初心者温情でも簡単すぎるわ。これは罠があるわね」
R蘭香―1「えっ。そういうものなのですか」
R万羽―1「そういうものなのよ。ビルまで普通に行けたとしても、ブリーフィングルームまで行けるかどうかは別問題だしね」
R蘭香―1「えっ」

R東雲―2「(端末越しに)ビルまでは20分で着けても、ブリーフィングルームがビルの200階にあってエレベーターが使えないとかだと、時間内の到着は絶望的だからな。まあそうだとしても、すでにビルにいる俺にはアドバンテージが」
R此紀―1「(端末越しに)本当にそうね共産主義って素晴らしいわよね。同志東雲、そのビルは何階建てなのか教えなさい。情報は平等に共有すべきだわ
R東雲―2「(端末越しに)アッ」

R蘭香―1「えっ!? プロパガンダは遠隔でも有効なんですの!?

UV刹那―1「有効だ」

R万羽―1「これは余裕ぶっこいた東雲のミスね。端末通信なんかする必要ないのに」

R東雲―2「…………(ゴニョゴニョ)」
UV刹那―1「(ゴニョゴニョ)」

R東雲―2「…………5階建てです同志此紀様。1階から2階への階段の色は黒。それ以上はまだ見えないんでわかりませんが。俺は玄関の前にいるんで」

R此紀―1「ということは、ビルにさえ到着できたら、あとはほぼ安心かしら? まあ歩いて行きましょう」
R蘭香―1「(プロパ……やっぱり無敵なのでは……?)……あっ」
R万羽―1「なあに? 同志蘭香」

R蘭香―1「ええと、私たちは今、コミーの洗脳を受けておりますけれど……2体目からは洗脳が解けるのですよね? つまり、2体目になった瞬間、此紀様をコミーという理由でZAPできるのでは? 今は同志だからできないのでしょうけれど」

UV刹那―1「良い発想だが市民蘭香、此紀をコミーとしてZAPするには、『そのクローン体で得た証拠』が必要だ。『前クローン体の記憶』は証拠にはなり得ない」

R蘭香―1「なんだか釈然としませんけれど、そういうルールですのね」
R万羽―1「同志蘭香、UV様の言うことは絶対よ。反逆するとZAPされちゃうわよ~」
R此紀―1「東雲が今この場にいたらZAPされてたわね」
R蘭香―1「(お二人はどうして私に優しくしてくださるのでしょうか……?)」

UV刹那―1「さて、3名はビルまで歩いている途中で、困り顔のインフラレッドの若者を見かけた」

R万羽―1「しらんぷり」
R此紀―1「コラ同志万羽。私たちコミーはクリアランスに関係なく、すべての市民を平等に扱うのよ。インフラレッドに声を掛けるわ」
R東雲―2「(端末越しに)『困り顔』って時点でSSM(※士気低下状態=市民としての義務「幸福」を欠いているため、対処の必要あり)なんじゃねえかな……まあインフラレッドなんかどうでもいいけど……」

UV刹那―1「インフラレッドの若者は、どうやら有り金全部をグリーン市民にカツアゲされて無一文になったらしい。ちなみにお前たちレッドプレイヤーの所持金は100クレジットがデフォルトだ」

R此紀―1「ここにいる3人で20クレジットずつ援助してあげるわ」
R蘭香―1「私もですか?」
R万羽―1「今はコミーの洗脳を受けてるからね……。20は痛いけど、しょうがないわね」

UV刹那―1「合計60クレジットを援助されたインフラレッドの若者は、とても恐縮しているようだ。地べたに這いつくばらんばかりに頭を下げている」

R此紀―1「このインフラレッドにも『気にしなくていいのよ、これが共産主義よ』とついでにプロパを打って、さあビルへ行きましょう。良いことをすると気持ちがいいわ」
R蘭香―1「……コミーは弱者を見捨てられないから、援助は仕方ないとして……別に10クレジットずつでも良かったのでは? 20クレジットも差し上げる理由は……」
R万羽―1「同志だから情報を共有するわ。たぶん、弱者を救えば救うほど、同志此紀は結社内でのランクが上がるのよ」
R蘭香―1「えっそういう……。コミーは優しくて良い組織だと思い始めていたのに……」

UV刹那―1「リアル洗脳だな」

R東雲―2「(端末越しに)『平等』なら50クレジットやるべきだったんじゃないっすかねえ、同志此紀様」
R此紀―1「(端末越しに)そしたらあのインフラレッドの所持金が150クレジットになっちゃうでしょ。合計60くらいでちょうどいいのよ。インフラレッドは低所得だから、急に大金を持たせたら事故を呼ぶわ」
R万羽―1「うーん口車」

UV刹那―1「TRPGは『ステータスよりも口車』というゲームだからな。どんどん『リアル言いくるめ』を活用しろ」

R蘭香―1「(あっ、これ『言いくるめ』が捨てスキルのやつですわ……。しまった……)」

UV刹那―1「3名はその後、何事もなくビルの前まで到着した。まだ指定時刻には10分ほどの余裕があるな。なお、東雲の姿は玄関にはない」

R此紀―1「ああん? 端末で呼び出して居場所を聞くわ。同志なんだから無視はしないでしょうよ」

UV刹那―1「……ところが、東雲は呼び出しに応じない」

R此紀―1「え?」
R万羽―1「あら? 3体目になっちゃったかしら?」
R此紀―1「だとしたら先を越されてるわね。UV様、ビルには問題なく入れますか?」

UV刹那―1「玄関周辺は無人だ。見ただけでは玄関ドアが施錠されているかどうかはわからない」

R此紀―1「同志万羽の『施設知識』でもう一回ダイス振って確認できない?」

UV刹那―1「……まあ認めよう。市民万羽、振るか?」

R万羽―1「同志が言うんだからしょうがないでしょー。振るわよ」

UV刹那―1「……失敗だ。施錠されているか、異常がないかどうか、市民万羽にはこの玄関ドアの詳細を確認できなかった」

R此紀―1「んもう、しょうがないわね。いいわ。あたしが開けるわ」
R万羽―1「いいの!?」
R蘭香―1「あの……? ビルの玄関ドアひとつに、なぜそこまで慎重になるのですか? 別にドアを開けたら爆発するというわけでもないでしょう」

R此紀―1「するのよ
R万羽―1「するわ

R蘭香―1「えっ

R此紀―1「そういうセキュリティシステムなのかも知れないし、東雲が3体目になってたら爆弾を仕掛けてるかもしれないわ」
R万羽―1「よくあることよ」
R蘭香―1「よく!?

R此紀―1「だから東雲を呼び出せたら、ドアを開けさせようと思ったんだけど、出ないんじゃしょうがないから、私が開けるわ」

UV刹那―1「玄関ドアはガラスの押し戸で、なんなく開いた。特に不審な様子もない」

R此紀―1「勝った。そして、ここからは黒い階段が見えるのよね? 東雲が言ってたわ」

UV刹那―1「見えるな。なお1階は無人だ。市民東雲の姿もない。階段の隣にはエレベーターもあるようだが」

R此紀―1「乗らない」
R万羽―1「乗る意味がない」
R蘭香―1「……爆発……するからでしょうね……」

R此紀―1「ブリーフィングルームはこのビルの中にあるとして、5階建てのどの部屋にあるのかが問題ね。10分だと全室探索はきついかも。1階は何部屋あるの?」

UV刹那―1「ワンフロアがすべてロビーになっている」

R此紀―1「じゃあ2階以上ってことね。階段をのぼります」
R万羽―1「少し距離をとってついてくわ。3メートルくらい」
R蘭香―1「で、では、万羽様の後ろについていきます。ええと、私も3メートルで」

R此紀―1「ここからは小声でしゃべるわ。ここで玄関トラップがないってことは、東雲はデスレパ(デス・レパード)とかアンチ(反ミュータント)とかの所属じゃないみたいね」
R万羽―1「まだ2体目で、コミー状態なだけじゃない? って、あたしも小声で答えるわ」
R此紀―1「それなら端末の呼び出しに出ないのがおかしいと思うのよね。同志が呼んでるんだから」
R万羽―1「アンチなら、まだあたしたちのMT能力を何も見てないから、殺しに来られないだけとかもあるし」
R此紀―1「にしても、3体目になってる場合、過激派結社なら仕掛けてきてるはずなのよねえ。1人で先乗りなんて、絶好のチャンスでしょ」

R蘭香―1「(会話が物騒でついていけませんわ……。まだミッションも聞いていないのに……。あと小声でしゃべるのは、東雲さんを警戒しているからでしょうか? では、私も小声で……)」

UV刹那―1「2階にのぼると、通路を挟んで、左右に1つずつ扉が見えた。窓はなく、中がどうなっているのかはわからない」

R此紀―1「3階にもこのまま登れる? 階段の色は黒のまま?」

UV刹那―1「黒だな。オマケして答えてやると、階段は5階までずっと黒のままだ」

R此紀―1「階段『は』? UV様、2階の通路と扉の色はどうなってるの?」

UV刹那―1「安心しろ。すべて黒だ」

R此紀―1「同志万羽の『施設知識』で、この階に同志東雲がいるかどうか探れない?」
R万羽―1「あたしのそれに頼りすぎじゃない? 此紀は何にポイント振ったのよぅ?」

UV刹那―1「不可能だな。『施設知識』に探知能力はない」

R蘭香―1「1フロアに2部屋しかないのなら、しらみつぶしも可能ではありませんの?」

UV刹那―1「……まあ時間的には可能だな。やりたければやるといい」

R此紀―1「右のドアを開けるわ」
R万羽―1「左のドアを開けるわ」

R蘭香―1「えっ、玄関のドアはあれだけ警戒していたのに?」
R此紀―1「仕掛けるなら、確実に通らなきゃいけない玄関よ。あそこを通過できた以上、東雲の罠はないと見るわ」
R万羽―1「ビル側の罠はわからないけどね。まあここまで無事に来られただけでもツイてるんだし、1回くらい死んでもしょうがないわよ」
R蘭香―1「(ブリーフィング前に死ぬことが前提……)」

UV刹那―1「2階の2部屋には、特に罠はなかったが、他のことも起きなかった。どちらの部屋にもテーブルとホワイトボードだけがあり、無人だ」

R此紀―1「2階はハズレね」
R蘭香―1「? そうなのですか? テーブルとホワイトボードがあれば、ブリーフィングができそうですが……」
R万羽―1「東雲がいないでしょ? アタリの部屋に先回りしてるはずよ」
R蘭香―1「アタリの部屋に到着しているのなら、教えてくださればよろしいのに」
R此紀―1「そういうゲームなのよ。でも確かに、教えてこない以上、友好結社ではないみたいね」
R万羽―1「コミーに友好結社なんか無いでしょ?」
R此紀―1「あんたたちの、よ。ま、結社からのミッション関係で何か作業でもしてるのかもしれないけど」

UV刹那―1「プレイヤーのお前たちには言うまでもないが、ハウスルールで『結社からのミッションは開幕地点ですでに受け取っているもの』とする」

R蘭香―1「(……誰に向かって喋っているのでしょうか……)」

R此紀―1「3階へ行くわ」

UV刹那―1「2階と同じく、通路を挟んで扉が2つ。いちいち聞かれるのも鬱陶しいのでオマケしてやる。通路も扉も色は黒だ」

R此紀―1「右を開ける」
R万羽―1「左を開ける」
R蘭香―1「(緩急の差が激しい……)」

UV刹那―1「右の部屋は2階と同じく、テーブルとホワイトボードだけがあった。左の部屋には、同じくテーブルとホワイトボード。テーブルの側に東雲が佇んでいる」

R東雲―2「3名には目もくれずに口笛を吹いています」
R此紀―1「あっ2体目じゃない! どうして呼び出しに応じなかったのよ! と詰め寄るわ」
R東雲―2「3名には目もくれずに口笛を吹いています」
R万羽―1「コピペ!」

R東雲―2「おやおやみなさん、到着が遅かったですねえ、と言いながら悠然と耳栓を外します」
R此紀―1「そんな原始的な……。それで呼び出しの無視を正当化したとして、何の意味があるのよ」
R東雲―2「ただの嫌がらせです
R万羽―1「性格わっる」

R蘭香―1「? 同志に『嫌がらせ』をしてもいいのですか? それだとプロパの拘束力がかなり無意味になるような?」

UV刹那―1「今のはプレイヤー発言であり、キャラクター発言ではないのだろうな。市民東雲、キャラクター発言を」

R東雲―2「ブリーフィングに備えて気持ちを落ち着けたかったので、耳栓をして集中力を高めていました。あっ端末に呼び出しが来てたんですか? 気付かなかったなあ」

R此紀―1「きたなっ」
R万羽―1「意地わっる」

R蘭香―1「UV様、この部屋の設備は、他の部屋と同じく、テーブルとホワイトボードだけなのですか?」

UV刹那―1「そうだな。天井はブルーライトで照らされ、窓はない」

R此紀―1「えっ」
R万羽―1「えっ」
R東雲―2「えっ」

R蘭香―1「?」

UV刹那―1「? どうした?」

R此紀―1「ブルーライトなの?」
R万羽―1「死んだわ」
R東雲―2「レッドのクズの分際でブルー様のお部屋に……」

UV刹那―1「あ、そうかすまん。普通のライトでいい」

R此紀―1「ブルーライトといってもそれはただの名詞で、普通の明かりだったわね! UV様がミスをするわけないものね!」
R万羽―1「フツーの明かりだから、レッドのあたしたちでも安全ね」
R東雲―2「ああビビッた。いや完璧な市民の俺はビビらねえけどな」

R蘭香―1「……話を戻しますけれど、要するに他の『ハズレ』の部屋と同じ設備なのですわよね? 同志東雲は、どうしてここが『アタリ』だとわかったのですか?」

R東雲―2「ホワイトボードに書いてあるから」

UV刹那―1「ホワイトボードには確かに、藍色の電子インクで『ブリーフィングルーム』と書かれているな」

R蘭香―1「そんな安直な。これも同志東雲の嫌がらせの一環で、同志東雲が書いたものではありませんの?」
R此紀―1「それはないわね。『ホワイトボード』よ。ホワイト。しかもインクは藍……インディゴ。レッドの私たちが触れる設備じゃないわ」

R蘭香―1「ブルーライトはUV様の口が滑ったのに、ホワイトボードにはそんな厳然たるルールが適用されるんですの?」

UV刹那―1「……される。レッドのクソどもであるお前らは、ホワイトボードを利用することはできない」

R万羽―1「UV、おこなの? 完璧な市民だからおこなんてしないわよね?」
R東雲―2「UV様は完璧でおられますから、SSMなどに陥りゃしませんよねえ」

UV刹那―1「ストレートだからってUVを煽ってくるスタイルやめろ!

R此紀―1「まあ、ここがブリーフィングルームなんでしょ? 時間を潰すわ」

UV刹那―1「では数分後。インディゴの市民が1人、靴音を響かせながら部屋に入ってくる」

I市民―2「諸君、時間通りに集まったようだな」

R蘭香―1「あら? この方、2体目ですのね」
R万羽―1「よくあることよ。理由は明かされたり明かされなかったりだけど」

I市民―2「よく気付いたな市民蘭香。実は私の前クローンは、3日前にサイオンの手先によって殺害されたのだ。今回の私は完璧なので、そのような失態は犯さないがな」

R万羽―1「さっさと明かされたわね」

I市民―2「今回のミッションはもちろん、その下手人を捕え、ここへ連れてくることだ。そやつの生死は問わない。私の上司であるUV様も大変お怒りだ」

R此紀―1「ホワイトボードを使ったのは、このインディゴ様のさらに上司であるUV様ってことね」
R東雲―2「近未来で『下手人』ってボキャブラリーはどうなんすか?」

I市民―2「……何か言ったかね、市民東雲?」

R東雲―2「何も申しておりません。俺たち4名のトラブルシューターは平等に公平にインディゴ様のお話に耳を傾けております」
R此紀―1「!!!」
R万羽―1「アッ」

I市民―2「……今? コミーのクズどもがよく使う単語が聞こえたような気がしたが?」

R東雲―2「はいインディゴ様! 俺たち4名は平等に公平に、共産主義を支持する者です! 共産主義バンザーイ!

I市民―2「……真実かね? 市民此紀、市民万羽、市民蘭香よ」

R此紀―1「……真実です」
R万羽―1「うー、真実です。まあプラマイゼロかなー」
R蘭香―1「真実です、と答えなければいけないのですよね。コミー状態なので」

UV刹那―1「すり抜ける手段もあるが……まあ初心者はここでZAPされておいた方が良いかも知れんな。4名は仲良くZAPされ、心臓を撃ち抜かれて倒れた。そして死体はすぐさま清掃ボットによって片付けられ、同時に仲良く新しいクローンが送られてくる」

R此紀―2「前回の私はコミーの反逆者だったけど、今回の私は完璧よ!」
R万羽―2「完璧!」
R東雲―3「完璧完璧。コミー状態も解けたし。もう3体目になっちまったけど」
R蘭香―2「はあ、完璧です……」

R蘭香―2「!!!」

R此紀―2「なあに市民蘭香。耳なんか塞いじゃって」
R万羽―2「『インディゴの前でプロパ打ったらZAPされちゃうから、ここではだいじょぶよー』と、あたしが端末で文章にして、耳を塞いでる市民蘭香に画面を見せてあげるわ」

R蘭香―2「プロパ……怖い……」

R東雲―3「プロパ猛警戒はパラノイアあるあるだな。ま、市民万羽様の言う通り、ここでプロパは打てねえんだ。ミッションを聞こうぜ」

R此紀―2「……」

R此紀―2「まだ怯えてる市民蘭香に、私も『そんなに怖がらなくても大丈夫よ』と端末に文章を打って、見せてあげるわ」
R万羽―2「あっ」
R東雲―3「あっ」

UV刹那―1「……端末に打たれた文章『そんなに怖がらなくても大丈夫よ。同志蘭香。共産主義者は同志を怯えさせはしないわ。さあ目覚めなさい』を、市民蘭香はもろに見たな。端末画面は市民蘭香にのみ向けられているので、市民万羽や市民東雲、そしてインディゴ市民の目には入っていない」

R蘭香―2「きゃーー!!!

R東雲―3「お家芸『上位クリアランスの目を盗んでプロパぶっぱ』も来たな……」

R万羽―2「此紀が何かを見せようとしてきたら、目を逸らさなきゃダメよ」

I市民―2「なにやら騒がしいようだが、もちろんミッションは受けるな? 期限は明日の18時。ここでデブリーフィングを行う。それまでに成果を挙げられなかったら、諸君は反逆者ということだろう」

R万羽―2「そんなに面倒でもなさそうなミッションね。よかったー」
R此紀―2「もちろん受けさせていただきます、インディゴ様」
R東雲―3「必ずやそのサイオンの犬を捉えてみせましょう」

R此紀―2「あっ」
R万羽―2「あっ」
R蘭香―2「?」

R東雲―3「? ……あっ!!!!

I市民―2「市民東雲。『いぬ』は、君のクリアランスには開示されていない情報だが?

R東雲―3「ちょっと待って! 『靴を舐める』! 卑猥なほど舐めます!! 自信があるんで!! UV様!!」

UV刹那―1「…………成功だ。市民東雲は、インディゴ市民の気を逸らすことに成功した」

R蘭香―2「(えっ!? あの意味がわからなかった『靴を舐める』というスキル、実は強いんですの!?)」

R此紀―2「あんた、いつも小賢しく立ち回るわりに、詰めが甘いわよね」
R東雲―3「不覚。『靴舐め』にメッチャ振ってることもバレちまった」
R万羽―2「それはわかってたわよ。あんたいつもそれに振ってるでしょ」

R蘭香―2「(確かエンプラ(フリー・エンタープライズ)の結社特典は、『靴舐め』に関係する『あつかましさ』のポイントが3アップだったはずですわ。東雲さんの所属結社は、エンプラ……?)」

UV刹那―1「ところでインディゴ市民は、帰っちゃおうかなーどうしよっかなーという仕草を見せているが」

R此紀―2「あ、情報ゼロじゃない。困るわ。市民東雲、あんた靴舐めてもっと情報もらいなさいよ」
R東雲―3「しょーがねえなもう。UV様、もう一丁『靴を舐める』で」

UV刹那―1「成功だな」

I市民―2「ふむ。そのサイオンの手先は、A地区に潜伏しているらしい」

R万羽―2「市民東雲、もっと舐めてMT能力とか聞いてよ。このインディゴ、1回殺されたなら、最低でも1つは見たはずでしょ」
R東雲―3「クソッ、もう一丁『靴を舐める』!

UV刹那―1「成功だ」

I市民―2「サイオンの連中は、ただでさえ忌々しいMT能力を2つも持っている。前の私を殺害した能力は『電撃』だったようだな。もう1つはわからないが」

R東雲―3「とか言って本当はもう1つも知ってんじゃねえかなあ? さらに『靴を舐める』!

R蘭香―2「4連続で…!

UV刹那―1「成功だが、インディゴ市民はもう靴はピカピカだから要らんという顔をしているな」

R此紀―2「まあ、『靴舐め』一本でそこまでうまくは行かないわよね」
R万羽―2「『賄賂』行ってみる? 30くらいなら出すけど」
R東雲―3「太っ腹っすね」
R此紀―2「あたしたちはインフラレッドに施したけど、あんたのクレジットは手つかずでしょ? 50くらい出しなさいよ」
R東雲―3「みなさんでインフラレッドのゴミクズどもに施し? そんな物好きなことをなさった理由は3体目の俺には想像もつきませんが、知ったこっちゃねえ話っすね。拒否します」
R此紀―2「チッ」
R万羽―2「ケチな男はモテないわよ」

R蘭香―2「(このクレジットへの執着、やはりエンプラ……?)」

R此紀―2「『賄賂』も少額だと取られ損になるのよね。とりあえず、MT能力1つと潜伏区域がわかったし、このあたりで諦める?」
R万羽―2「そーね。充分だと思うわ」
R東雲―3「じゃあ、インディゴ市民に頭を下げて、ブリーフィングルームを出ますか」

R此紀―2「あ、ねえ東雲、」
R万羽―2「なんとなく耳を塞ぐわ。ブリーフィングの内容を集中して思い出すために」
R東雲―3「同じく、耳栓を突っ込んで目を逸らします」
R蘭香―2「(……これが訓練されたパラノイアプレイヤー……)」

UV刹那―1「共産主義者2人と、そのプロパを避けようとする市民2人の横を通って、インディゴ市民が帰って行ったな」

R万羽―2「市民東雲に、端末からメールを送るわ。『あとでこの地点で落ち合いましょう』って地図つきで」

UV刹那―1「お前は耳を塞いでいるのでは? 手が使えないはずだが」

R万羽―2「……」

UV刹那―1「そこで、帰ったと思ったインディゴ市民が引き返してきた」

R万羽―2「やった! 耳を塞ぐのをやめるわ! そしてこの隙に市民東雲にメールを送る!」

I市民―2「多忙なので帰ってしまうところだったよ。私は完璧な市民だから引き返してきたがね。より完璧なトラブルシューティングのために、MBDを決めなければならない」

R蘭香―2「? MBD?」
R此紀―2「来たわね……」
R万羽―2「幸福係がいいなあー」
R東雲―3「リーダーだけはご勘弁……」


その3へ つづく



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