ゆるおに 鬼たちの「パラノイア」その3

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鬼たちの「パラノイア」その3
TRPG「パラノイア」を鬼たちが遊ぶ
~『ビギナー市民 蘭香のための やさしいパラノイア』その3~



UV刹那―1「さて、MBDの割り振りだったな。これは要するに、ミッション中における役割分担だ。『リーダー』『記録係』『装備係』『幸福係』の4つが割り振られる」

R東雲―3「あれ? 『忠誠係』はともかく、『清潔係』も削除ですか?」

UV刹那―1「今回の卓ではな。ただでさえ初心者には情報の多いゲームだ。なるべくシンプルにしている」

R此紀―2「居住セクターやサービスグループ情報も排除してるわね。私も面倒なことは好きじゃないからいいけど」

R蘭香―2「シンプルにしていただけるのは助かりますわ。それぞれの係の特徴は……リーダーと記録係はなんとなくわかりますけれど、あとの2つがよくわかりませんわね」

UV刹那―1「ま、ここもハウスルール色が強いので説明してやろう。『装備係』は、装備品の分配と、装備物のチェックを行う」

R蘭香―2「あら? 肩書きの印象のわりに強そうですわね。装備品の分配が、『装備係』の気持ちひとつなんですの? 装備品というのは、現在デフォルトで所持しているレーザー銃の他にも手に入るということですわね?」

R万羽―2「そーよ。これから支給してもらえるわ。あと、装備係の本当の強さは、そっちじゃなくて……」
R東雲―3「『幸福係』はなあ! 役割の中で一番強いぜ!」
R此紀―2「(『装備チェック』の説明を省かせた……。やっぱり過激派結社の所属なの?)」

UV刹那―1「……『幸福係』が一番強い、というのはあながち間違いでもない。このアルファ・コンプレックスにおいて、幸福は義務だ。ゆえに、幸福でない人間は『SSM』と称され、この状態は早急に改善する必要がある」

R蘭香―2「幸福でない状態を改善? おじいさまが好んで使われるいけない葉っぱでも投与するのですか?」

UV刹那―1「ドストライクだ

R蘭香―2「えっ冗談でしたのに!

UV刹那―1「『幸福係』には、『幸福薬』が支給される。俺の卓では3つだな。これを投与された者は大変ハッピーになる

R万羽―2「要するにラリッちゃうから、まともな判断も行動もできなくなるのよねー。他プレイヤーの言うことを全部聞いちゃうようになるわ。ちなみに全員がどんどん命令したら収集つかなくなるから、ハウスルールで『最初に命令したプレイヤーにのみ従う』ってことになってるわね。『操作系は早い者勝ち』ってやつよ」

R此紀―2「プロパと同じで、そのクローン体が死ねば解除されるんだけど、プロパ打たれたときと違って、『自殺』という抜け道はないの。自分の行動を制御できないからね」

R蘭香―2「なにそれこわい」

UV刹那―1「『記録係』は、まあそのままだな。カメラが支給され、主として反逆の証拠を録画し、上司にチクってZAPさせるために利用する」

R蘭香―2「この世界の構成要素はぜんぶ殺伐としているんですの?」

UV刹那―1「あと『リーダー』も、確かに指揮権を与えられ、それに刃向かった者は反逆者だと見なされるのだが……」

R東雲―3「リーダーだけはご勘弁!

R蘭香―2「あら? 指揮権があって、刃向かうことが許されないのなら、実質、クリアランスがひとつ上くらいの権力を得られるのでは?」

UV刹那―1「それは合っている。合っているのだが……」

R此紀―2「ハイリスク・ハイリターン。責任者は責任を取るために存在するのよ」

R万羽―2「トラブルシューターの起こした問題とか、不祥事とか、反逆とかは、ぜんぶリーダーのせいにされるわね。ミッションを成功させても失敗になっても、そのあとのデブリーフィングで、まずZAPされる係よ」

R蘭香―2「あら……? 聞いた限り、『リーダー』にのみペナルティ的側面があるのですか?」

UV刹那―1「役割としてはそうだが、『幸福係』などは、脅威であるぶん、仲間から抹殺される可能性も高い」

R蘭香―2「まだ殺伐としなければ気が済まないんですの?

UV刹那―1「何か言い忘れたことはあるかな? ああ、『記録係』のカメラのオン・オフは任意なので、自分に都合の悪い場面だけをカットしたりできる。あと、『装備係』だが……」

R東雲―3「UV様! 係の割り振りは今回どうやって?」
R万羽―2「(持ってる……ぜったい装備チェックされると困るもの持ってる……)」

UV刹那―1「軽いテストで適性を判断して割り振ったりもするんだが、今回はあみだくじにした。もう決まっている」

R蘭香―2「え、いきなり『リーダー』に任命されても困ってしまいます……」

UV刹那―1「安心しろ。さあ、インディゴ市民から割り振りが発表されるぞ」

I市民―2「市民蘭香には『記録係』を任命する。『リーダー』は市民此紀だ。『装備係』は市民万羽。『幸福係』は市民東雲だ。それぞれの支給品はPLC(配給所)にて受け取りたまえ」


R此紀―2「リーダーか……。ま、しょうがないわね」
R東雲―3「ラッキー!」
R万羽―2「インディゴ様、装備チェックは何回までできるの?」

I市民―2「ふむ。3回までとしよう。反逆者でもあるまいし、そうそう装備に不備は起こるまい?」

R万羽―2「じゃあさっそく1回目のチェックをするわ

R蘭香―2「えっ? 装備は、これから……ええと、PLCとかいうところで受け取るのでは? まだ初期装備のレーザー銃しか持っていないのに……?」

R此紀―2「所属結社によっては、ボーナスとして違法武器を支給されたりするわ。『装備係』のチェックは、これを看破できるのよ。違法武器の所持なんて、もちろん反逆。即ZAP対象よ」

UV刹那―1「市民万羽は、トラブルシューター3名の装備品のチェックを行った。特に異常は見られないようだ」

R万羽―2「あらー……?」
R此紀―2「(東雲が違法武器でも持っているかと思ったけど、ブラフだったのかしら。よく意味のわからないブラフだけど……)」
R東雲―3「~♪」

R蘭香―2「……トラブルシューター『3名』の装備品チェック?」

UV刹那―1「その通りだ。そうだな、『装備係』?」

R万羽―2「そーよUV。あたしの装備は万全に決まってるわよー。チェックなんかとっくにしてあるもん」

R蘭香―2「……。……。……あっ! ずるい! これはずるいですわよ!? 自分だけは装備チェックをすり抜けられる、ということですわね!?」

R此紀―2「そう。それが『装備係』の一番の強みよ」
R万羽―2「ま、別に見られて困るものなんか持ってないのもホントだけどね」
R東雲―3「とか言って、万羽様は結構しれっと嘘つくんだよなあ。油断すると痛い目見るぜ」

I市民―2「それでは諸君、励みたまえ」

UV刹那―1「と言って、インディゴ市民は今度こそ帰って行ったようだ」

R此紀―2「さて、あたしがリーダーなわけだけど、今回の作戦は」
R万羽―2「市民東雲と先にPLCに行ってるわ! そこで落ち合いましょ! と言って走ってビルを出て行くわ」
R東雲―3「あ、じゃあそういうことで、と俺も走って出て行きます」

R蘭香―2「……プロパが怖いのはわかりますけれど、リーダーの言うことを聞かないのは、反逆行為にあたるのでは?」
R此紀―2「行き先が同じだからね。『完璧な市民は迅速に行動するもの』とか言い訳してくるわよ。あたしたちも向かいましょ」

UV刹那―1「20分後、トラブルシューター4名はPLCの内部で合流した。『例によって』PLCはごった返しており、カウンター前にはインフラレッドが長蛇の列を成している。職員であるイエロー市民は対応に追われているようだ」

R蘭香―2「例によって?」
R此紀―2「トラブルシューターはPLCに寄って支給品を受け取らないといけないんだけど、すんなり受け取れることなんかほとんどないのよ」
R東雲―3「カウンターに並んでるインフラレッド全員ブッ殺します? 例によって」
R万羽―2「別に殺さなくても、一番前に割り込みしたらいいじゃない。例によって」

R蘭香―2「なるほど……これが格差社会……。絶対的な権力階層……」

R此紀―2「ダメよ。(インフラレッドも平等なる市民だもの。そんな横暴は許さないわ)……リーダー命令よ」
R蘭香―2「……あら? ここでプロパは打たないんですの?」
R万羽―2「PLCの中には、イエロー市民もあちこちに居るから。ここでプロパ打ったらイエロー市民から即ZAP食らうし、さっきの発言自体も結構グレーよ。『リーダー命令』って言い張ってすり抜けたけどね」
R東雲―3「……俺が記録係だったら、今の発言を録画して『コミーの疑いアリ』ってチクるんだが、記録係の市民蘭香はどうせカメラのスイッチ入れてねえんだろ。コミー洗脳状態だから」

R蘭香―2「(あ、普通に忘れておりました……。有事の際はカメラをオンにしなければいけないのですね)」

R此紀―2「とりあえず、そのあたりのインフラレッドに声をかけて話を聞くわ」

IR行列最後尾―4「これはレッド様! この行列、困ったことに、1週間ほど動いていないのです」

R蘭香―2「……1週間? え、この方がた、1週間立ちっぱなしですの? それとも整理券式などですか?」
R万羽―2「まーよくあることよ。リーダー、どうするの? ミッションの期限は明日の夜よ」
R此紀―2「割り込みじゃなくて、『交渉』してくるわ。あんたたちはここで待っていなさい。リーダー命令よ。と言って、適当なカウンターの最前列に並んでいるインフラレッドのところへ行き、小声で耳打ちします」

R万羽―2「あれプロパ打ってるんでしょ? インフラレッドなんか無条件で言うこと聞くんだから、別に必要ないのに」
R東雲―3「コミーは横暴な割り込みをしない、ただし同志とは協力し合う、ってことなんでしょーね」

UV刹那―1「市民此紀が最前列のインフラレッドと交渉し、列に入ることに成功。カウンターのイエロー職員と話した結果、『謎の物流事故』が起きており、諸君が支給品を受け取れるのは1カ月後になると言われた」

R此紀―2「だそうよ、と戻って報告します」
R蘭香―2「1ヶ月!? ミッション期限は明日の夜ですのに!? あ、別に支給品がなくてもミッションクリアできるというパターンですか?」
R万羽―2「違うわ。インディゴに『支給品を受け取れ』って言われてるでしょ。受け取らなきゃ反逆よ」
R東雲―3「まあよくあることだ。あのカウンターにいるイエロー様の靴舐めてくるわ
R蘭香―2「ノータイムで靴を……」
R此紀―2「なんか変な行動されても困るし、一緒について行くわ。リーダー命令よ」

UV刹那―1「『靴舐め』でダイスを振る。……成功だ」

Y職員―1「靴を舐める? 要らんね。清潔は完璧な市民としての義務なのだから、私の靴はピカピカだ」

R万羽―2「『靴舐め』ってご機嫌取りのことでしょ? 別のところ舐めるとか臨機応変に行きなさいよ、市民東雲」
R東雲―3「UV様、俺は別にそれでもいいっすけど?

UV刹那―1「このゲームは全年齢対象だからダメ

R此紀―2「そもそも『靴舐め』が成功したのに通じないってことは、ご機嫌取りが通じないNPCってことでしょ? ここは『賄賂』じゃないの?」
R万羽―2「30出すわよ。東雲もここは出しなさいよー」
R東雲―3「これはしょうがねえかなあ。30出します」
R蘭香―2「あ、では私も、30出します」
R此紀―2「私も。合わせて120クレジットか……微妙ね。ちょっとイエロー様の様子を伺うわ」

Y職員―1「これは独り言だが、そろそろ新しい歯ブラシを買いたいと思っていたんだよな。150クレジットするんだが」

R万羽―2「歯ブラシ高っ
R蘭香―2「貨幣価値がわからないのですけれど、私たちが初期所持していた100クレジットとは、どのくらいの価値なんですの?」
R東雲―3「レッドの平均月給くらいだな」
R蘭香―2「歯ブラシ高っ

R此紀―2「あからさまな賄賂の要求ね。30足りないわ。東雲、あんたいちばん残金多いでしょ」
R東雲―3「さあて。みなさんの残額など存じませーん」

R蘭香―2「……」

R蘭香―2「あの、東雲さん、このクレジットのシステムで、少しわからないことがあるのですけれど……」
R東雲―3「ん? 何?」

R蘭香―2「東雲さんの耳元に顔を寄せて『共産主義って素晴らしいですわよね。ここは助け合ってミッションの成功をすべきですわ』とプロパを打ちます
R東雲―3「てめえ初心者温情で親切に答えてやろうとしたのに!!

UV刹那―1「うまい。小声の耳打ちだったため、イエロー職員や市民万羽の耳には入らなかった」

R此紀―2「あたしも小声で喋るわ。GJよ同志蘭香。そして同志東雲、3体目にして3回目のコミー洗脳おめでとう。あんたは残金が多いはずでしょ? 私財を貯め込むのは共産主義に反するわ。あと30クレジットお出し」
R東雲―3「クソッ! 出します!!」
R万羽―2「(……東雲とペアで行動すればプロパは避けられると思って、そのつもりで作戦立ててたのに、んもう……。今の此紀と東雲の発言は、コミーとしてZAPできるけど……一応『小声』って前置きしてたし、あたしの結社ミッションを考えると、やめた方がいいかも)」

R蘭香―2「(東雲さんの行動をある程度制御できますから、ここでのプロパは悪くはないはず……。でも私の本来の所属結社はコミーではありません。あまり仲間内にコミーを増やすと、のちのち自分の首が絞まってしまう……?)」

R此紀―2「さて、リーダー命令よ市民万羽。ここでイエローが値上げ交渉とかしてきたら面倒だわ。あんた『賄賂』にもちょっとポイント振ってるでしょ? 行ってきてちょうだい」

R蘭香―2「あの、シートは非公開なのですよね? ちょくちょくみなさん、相手のステ振りを知っているような言動が見られますが……?」

UV刹那―1「メタ推理だ。特にこいつらは大体いつも同じようなシートを作るからな。内輪卓あるあるだ」

R万羽―2「んもう、しょうがないわね。イエローに『ちょうどそこで150クレジットを拾いましたが、これはイエロー様の持ち物では?』って差し出すわ」

UV刹那―1「万羽の『賄賂』でダイスを振る。……成功だ」

Y職員―1「やあ、これは間違いなく私の落としたクレジットだな。拾ってくれた礼に、支給物資の融通をしてあげよう。特別だぞ」

R蘭香―2「拾った? 落とした?」
R東雲―3「賄賂は違法なんだよ。だから見え見えでも、一応そうとわからねえように口車で通すわけだな。『言いくるめ』は上位クリアランスには通用しねえから、ここは『賄賂』スキル持ちの出番ってわけだ」

R蘭香―2「というと……」

R蘭香―2「つまり此紀様ご自身は、『施設知識』や『靴を舐める』や『賄賂』にはポイントを振っていないということですわね?」

R東雲―3「とも言い切れねえ。自分がそこに振ってることを隠すために、あえて俺らを頼ってる可能性がある」
R万羽―2「でも実際、此紀はあんまりそのへんには振らないわよね。ある意味チームプレイ志向だから、あたしたちと協力してミッションクリアしようとするわ」
R東雲―3「此紀様は毎回コミーだから、手下を増やして使う気満々ってだけでしょ……」

R蘭香―2「ちなみに同志東雲の所属結社はどこですの? 情報は平等に共用いたしましょうよ」

R東雲―3「俺はコミーだ。共産主義万歳。共産主義以外の結社なんかゴミクズだし興味もねえな」

UV刹那―1「これは東雲が有効だ」

R蘭香―2「(コミー状態だと行動が制限される半面、それを盾に情報隠蔽もできる……? そううまくは参りませんのね……)」

R此紀―2「何をコソコソ話してるのか知らないけど、イエロー職員が支給品をくれたんでしょ。分配しましょ」

UV刹那―1「支給物資は、『リーダーバッジ』『記録用カメラ』『幸福薬×3』で、これらは係の者へ。『レーザーライフル×1』『ウォーターガン×1』『電磁波防護スーツ×1』『おいしくて安全な食料×1』は装備係の万羽へと手渡した」

R此紀―2「ウォーターガン? 初めて見るわ。何これ?」

UV刹那―1「水を高圧噴射して物を切断する、ウォーターカッターってあるだろ。あれの武器版だ」

R蘭香―2「レーザーライフルは、初期装備のレーザー銃と何か違いますの?」
R東雲―3「射程がかなり違う。ええと、銃は50メートルで、ライフルは100メートルだったかな。もちろん赤にペイントされてるし、レッドとインフラレッドにしか効かねえ。上位クリアランスカラーの物を持つのは反逆だからな」
R蘭香―2「……えっ(あ、ホワイトボードを使えないのと同じ理由ですわね……。危ないところでした。『レベル3のコミーなら、2つ上のクリアランスのレーザー銃を手に入れるのも余裕では?』などと思っていました。所持しているのを見られたらZAPですか)」

R万羽―2「標的は『電撃』持ちなんでしょ? 電磁波防護スーツは強そうよね。あとウォーターガンって、水ってことなら、感電とか起こすのかしら」

UV刹那―1「お前たちのクリアランスには開示されていない情報だな」

R此紀―2「普段お目にかからない武器が出てきたってことは、そうなんじゃないの?」
R東雲―3「(スーツ一択だな……。チッ、よりによって『装備係』の万羽様だけがコミー状態じゃねえってのが痛いぜ。平等分配なんて期待できねえ)」
R蘭香―2「(トラブルシューターとしてのミッションは『捕縛』ですから、ウォーターガンがぜひとも欲しいところですが……。結社ミッションは……達成するのは望み薄ですかしら……)」
R此紀―2「(3人いりゃ、誰かが捕縛に使えるMT能力を持ってるでしょ。武器は別に要らないわね。スーツも……まあ別に要らないわ。食料が安定だわ)」

R万羽―2「んー」

R万羽―2「『ウォーターガン』はリーダー此紀に。『電磁波防護スーツ』は市民蘭香に。『食料』は市民東雲に。あたしは『レーザーライフル』でいいわ」

R此紀―2「!?
R東雲―3「!?

R蘭香―2「? よくわかりませんけれど、そこそこ妥当な分配なのでは……?」

R東雲―3「コミー状態でもない『装備係』が、そこそこ妥当な分配をするってのがおかしい!
R此紀―2「ターゲットのクリアランスもわからないのに、自分はレーザーライフルでいいわけ? どういうこと?」
R東雲―3「俺たちを狙撃する気としか思えねえ。デスレパかアンチか? 万羽様にしては珍しい結社選択だが……」

R万羽―2「…………別にいいじゃない。不満はないでしょ? あたしはインディゴ様から言いつかった『装備係』よ。揉めない方がいいと思うけど?」

R蘭香―2「あの……此紀様。『食料』はハズレ装備のように思うのですが、支給された同志東雲さんはそうは思っていないようですわね?」
R此紀―2「UV様から聞いたでしょ? 私たちレッドは、運が悪けりゃ食べただけで死ぬものを日常的に食べてるのよ。ミッション期日は明日の夜。それまで何も食べなきゃ衰弱するわ」
R蘭香―2「ああ。『安全な食料』を持っていれば、食あたりで残機が減るリスクを回避できるのですね。食べないと衰弱するというと、具体的には?」

UV刹那―1「これもハウスルールなので開示してやろう。空腹状態だと、すべてのステータスとMT能力にマイナス1~5相当の補正がかかる。SSM認定を受ける確率も上がるな」

R蘭香―2「あ、かなり厄介ですのね。なるほど。残機を失う可能性があっても、食事はしたほうがいい……のですかしら」

UV刹那―1「ちなみにこれもハウスルールで、24時間に1食で良いという設定だ。お前たちは17時間ほど何も食っていない。7時間以内に食事をしたほうが良かろうな」

R此紀―2「端末の時刻表示を見るわ。今は何時かしら」

UV刹那―1「17時だ。なお、レッド市民が21時以降に外出することは禁じられている。巡回ボットや上位クリアランスの者に発見されたら即ZAPを覚悟しろ」

R万羽―2「ってことで、本格的にミッションに挑むのは明日がいいと思うわー。少しは時間があるから、食事しながら作戦会議くらいしてもいいとは思うけど」
R此紀―2「……ぎりぎりまで全員で一緒にいたほうがいいわね」
R蘭香―2「なぜです? 21時以降に外にいてはいけないのなら、早く帰った方が安全なのでは……。あ、帰る家というのはあるのですわよね?」

UV刹那―1「4人全員が居住しているレッド専用の施設がある。ここから徒歩1時間ほどの場所だな。幸福なお前たちは、個室を所有している」

R万羽―2「リーダー此紀は、あたしを警戒してるのよ。唯一コミー状態じゃないし、自由時間を与えたくないんでしょ」
R此紀―2「東雲のことも警戒してるわよ? 今はコミー状態とはいえ、こいつ自殺解放よくするし」

R蘭香―2「な……なるほど。徹底的にメンバーを疑うのですね。……(私のことを疑わないのは初心者だからでしょうか?)」

R東雲―3「まあまあ。物騒な話はともかく、あなたがたはメシ食った方がいいんじゃないですか? 俺は大丈夫ですけどね。安全な食料を支給してもらったんで」

R此紀―2「UV様、R&Dには行かなくていいの?」

UV刹那―1「初心者向けに、今回は省いた。ミッションに集中するがいい」

R蘭香―2「?(わかりませんけれど、省いたのなら関係ないことなのでしょう。ただでさえ情報の多いゲームですから、なかなか大変ですわ)」

R万羽―2「サイオン相手にR&Dの兵器なしっていうの、それはそれで難しい気もするんだけど?」
R此紀―2「ウォーターガンの弾薬……つまり水って、持ち歩かなきゃいけないの? タンクの容量はどのくらい?」

UV刹那―1「5発は撃てるぞ。タンクは1リットルだな。1リットルのペットボトルでも持ち歩けば、リロードがスムーズなのではないか?」

R此紀―2「1リットルの水ってことは、重量は1っていうことでいいのよね?」

UV刹那―1「今回はそもそも、携行限界を設けていないから、重量は気にしなくていいぞ。つまりお前が100本のペットボトルを背負っていても、別に関知しない」

R此紀―2「あら? 要するに弾は無限なのね? UV様も、お孫さんが参加しているミッションではお優しくていらっしゃるわね」
R万羽―2「リーダー此紀、これからどうするの? 食事に行くならいい店を知ってるわよ。UV公認の、毎回出てくる店で、安くてそこそこ安全よ(あと従業員がイエローだからプロパを回避できるわ)」
R東雲―3「俺は食事をしなくてもいいんで、帰ってもいいですか?」
R此紀―2「ダメよ、作戦会議を兼ねるんだから。これをバックレるなら反逆者ってことね」
R東雲―3「だと思いました」

R此紀―2「じゃ、市民万羽お勧めの飲食店に移動して食事をするわ。いつもの店でしょ? ここ(PLC)に隣接してる」

UV刹那―1「そうだ。4名はその店へ移動した。カウンターのイエロー市民が、3名分の固形食を出してきた。その対価として、市民東雲以外は1クレジットを支払った」

R万羽―2「カウンターに近いテーブルに座るわ! 具体的には、コミーがプロパを打っても、イエローの従業員の耳に届く位置よ! この店のテーブルカラーが全部黒なのは知ってるしね!」

R東雲―3「……」

R東雲―3「万羽様だけコミー状態じゃねえ。俺はすでに3体目……」

R東雲―3「ZAPZAPZAP万羽様!!

R万羽―2「えっ!?」
R此紀―2「……」
R蘭香―2「えっ!?」

UV刹那―1「R万羽―2は心臓を撃ち抜かれて死亡した。巡回ボットがすぐに死体を回収する。市民東雲、ZAP理由を明示せよ。明示できない場合、お前は市民此紀と市民蘭香からZAP対象と見なされる」

R東雲―3「『今回の卓での俺たちは』この店に入るのは初めてです。なのに店内のテーブルカラーをあらかじめ知っていた? おかしいっすね! これはUV様相当のクリアランス権限がないと知り得ない情報です! つまり万羽様は、違法な情報網を持つ反逆者だ!」

R蘭香―2「えっ、さっきまで普通にメタ情報を共有していたのに、急にそこを刺しに行くのですか?」
R此紀―2「様子を見て判断したんでしょうね。確かに万羽は私たちの中でもアドバンテージがあった。万羽の残機を潰すのが得策と考えたんでしょ」

UV刹那―1「有効だ。市民東雲はZAP対象から外れ、新しい万羽のクローンが送られてくる」

R万羽―3「チッ……。前回のあたしはなぜかUV様しか知らないことを知っていた反逆者だったけど、今回のあたしは完璧よ」

R蘭香―2「(私だけ初参加で、メタ情報がないのは不利だと思っておりましたけれど、情報を持っているがゆえのZAPもあるのですね……。これがパラノイア……)」

R万羽―3「もー! さっさと食べるわ! どうせ判定あるんでしょ? ダイス振ってどーぞ!」

UV刹那―1「……成功。成功。失敗

R万羽―3「えっ」
R此紀―2「誰?」

UV刹那―1「市民此紀と市民蘭香は、無事に食事を終えた。市民万羽は食道が焼けただれたので死亡した

R万羽―3「えーー!!!
R蘭香―2「万羽様の3体目の生存時間は1分くらいでしたわね!?」
R東雲―3「(この店で出るメシは大体安全だから)ファンブル出たんすね、たぶん(ラッキー)」

UV刹那―1「R万羽―3の死体は巡回ボットに回収され、新しい万羽のクローンが送られてくる」

R万羽―4「……むー。前回のあたしは、食あたりを起こすような不健康な反逆者だったけど、今度のあたしは完璧よ」

R蘭香―2「UV様、食事判定を少し詳しく教えていただきたいのですが。新しいクローン体になった場合、空腹度はリセットですか?」

UV刹那―1「いや。自殺からの空腹度リセットを防ぐために、空腹度は維持されている。つまり先程の食事で栄養を摂取できなかった万羽は、もう一度食事をしたほうがいいということだ」

R蘭香―2「新しいクローンになっても空腹度がリセットされないというのは、かなり釈然としないルールですが、UV様のルールは絶対なので、疑問を持ってはいけないのですね?」

UV刹那―1「その通りだ市民蘭香。このあたりのハウスルールは本当にばらつきがあるので、都度、ゲームマスターに確認することをお勧めする」

R万羽―4「もう一回食べるわよ! 判定ダイスどーぞ!」

UV刹那―1「成功だ。市民万羽は満腹になり、1クレジットを支払った」

R此紀―2「さて、万羽の残機が減ったのは痛ましいことだけど、明日の予定ね。A地区の入り口に、朝10時集合でいい? あたしたちの居住区からA地区までは徒歩1時間。無理のない集合時間でしょ」
R万羽―4「いーわよ」
R東雲―3「了解」

R蘭香―2「……私たちは全員が同じ施設に居住しているのですわよね? 別に現地集合でなくても、一緒に出発すればよろしいのでは……?」

R此紀―2「……」
R万羽―4「……」
R東雲―3「……」

R蘭香―2「(えっ? 此紀様は、万羽様と東雲さんに自由時間を与えることを警戒していたはず……。今の私の提案はそれに則るものだと思うのですが……?)」

R此紀―2「あたしは100本のペットボトルに水を汲まなきゃいけないから、出発に少し時間がかかるかも知れないの。みんなの足を引っ張るのは悪いわ」
R東雲―3「ん~? そんなもんは今夜のうちに済ませておくのが完璧な市民の義務なんじゃないっすか?」
R此紀―2「完璧な市民だから、夜は早くに休んで、朝は早く起きるのよ。水汲みを手伝ってくれてもいいわよ? 平等に作業を分担しましょ」

R万羽―4「(あんまり此紀をZAPしたくはなかったけど、あたしだけ残機が少ないのは不利ね……)あら? 『平等』とかいう、コミーがよく使う言葉が聞こえたわ? これはひょっとし」
R東雲―3「ZAPZAPZAP万羽様!!
R万羽―4「えーーーーー!!!!!!
R蘭香―2「え!? こ、これは万羽様に理があったのでは!?」
R此紀―2「……そうでもないのよねえ。万羽はこういうところでよくうっかりやらかすのよね」

UV刹那―1「R万羽―4は心臓を撃ち抜かれて死亡した。巡回ボットが死体を回収する。市民蘭香が疑問に思っているようだ。市民東雲、ZAP理由の明示を」

R東雲―3「『平等』って言葉をコミーがよく使う? それは俺たちレッドには開示されてない情報ですね! つまり、万羽様は違法な情報網を持ってる反逆者ってことです!

UV刹那―1「有効だ。なお、ブリーフィングの際に同じ理由でインディゴ市民がZAPを行ったが、インディゴには開示されている情報だ」

R此紀―2「ちなみに、『コミーは同志を告発することはできない』んだけど、東雲は今もさっきも、万羽をコミー扱いせず、あくまで『違法な情報網を有している反逆者』としてZAPしたわ。このあたりはプレイヤーのテクニックね」

R蘭香―2「あら? 確か最初に、『このゲームにおいて、反逆者とはコミーと読み替えていい』と説明を受けた記憶があるのですけれど……」

UV刹那―1「そこはコンピュータ様目線の話だ。結社に『コミー』が実在し、他の結社も多くが違法である以上、市民目線でそこは必ずしもイコールではない。そもそも此紀の言ったように『コミーは同志を告発できない』ので、『反逆者=コミー』としたら、コミー所属者は誰のこともZAPできなくなってしまうからな。……と、ここで新しい万羽のクローンが送られてくる」

R万羽―5「ああーん!! ミッション着手前なのに、もう5体めになっちゃったけど、今回のあたしは完璧よ!」

R東雲―3「『装備係』で良かったっすね万羽様。リーダーになってたら、もう実質残機ゼロっすよ。リーダーは普通、デブリーフィングで1回はZAPされますからね」

R万羽―5「……」

R万羽―5「ZAPZAPZAP東雲!!

R此紀―2「あ。馬鹿」

R東雲―3「あ。まあいっかな?」

R蘭香―2「い、今のは何がアウトだったんですの……?」

R万羽―5「『リーダーだったら実質残機ゼロ』『デブリーフィングでZAPされるから』と言ったわね? これは『ミッションを失敗させてやる』というコミーの予告に違いないわ! 完璧な市民なら、ミッションでリーダーがZAPされるような失態を犯すはずがないもの!」

UV刹那―1「有効だな。R東雲-3は心臓を撃ち抜かれて死亡、回収され、新しいクローンが送られてくる」

R東雲―4「前回の俺は万羽様に看破されたように、本当にコミーだったが、今回の俺は洗脳も解けて完璧だぜ」

R此紀―2「(プロパ洗脳が解けちゃったじゃない……。東雲ももうそうそう隙を見せないでしょうね。万羽ったら、頭に血がのぼってたんでしょうけど、余計なことしてくれたわ)」

R東雲―4「ところでリーダー? 会議も終わったし、飯も食ったし(俺はあとで食うけど)、もう解散しません?」
R此紀―2「(プロパ洗脳まで解けた東雲に自由時間を与えたくはないわ)……20時まで、ここで談笑して親交を深めましょう? より完璧なトラブルシューティングのために、人間関係を円滑にするべきだわ。これはリーダー命令よ」

R東雲―4「チッ」
R万羽―5「ま、しょーがないわね」
R此紀―2「というわけでUV様、私たちは20時までここで談笑します。そこで解散で」

UV刹那―1「いいだろう。時間は20時になった。4名のトラブルシューターたちは解散した」

R蘭香―2「……?(ですから、自由時間を与えたくないのなら、ここで解散せずに、居住施設まで一緒に帰ればよろしいのでは……?)」

UV刹那―1「これ以降、行動ある者は、俺に個別に伝えるように」


その4へ つづく


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